インバウンド顧客は何を目的に日本に来ているのか?訪日外国人のニーズをマーケティング視点で整理してみた。

最近、街を歩いていると、海外から来た観光客の方を見かける機会がかなり増えたように感じます。

東京、京都、大阪のような有名観光地だけでなく、飲食店、ドラッグストア、百貨店、コンビニ、地方の観光地など、さまざまな場所でインバウンド顧客の存在を感じるようになりました。

では、そもそもインバウンド顧客は何を目的に日本へ来ているのでしょうか。

「観光のため」と一言でまとめることもできますが、もう少し細かく見ていくと、日本に来る目的はかなり多様です。

この記事では、訪日外国人が日本に来る目的を、観光・食・買い物・体験・SNS・安心感などの観点から整理しつつ、マーケティング視点で企業や店舗が何を考えるべきかをまとめてみます。

結論:インバウンド顧客は「日本でしか得られない体験」を求めている

まず結論から言うと、インバウンド顧客は単に日本の商品や観光地を求めているのではなく、「日本でしか得られない体験」を求めているのだと思います。

たとえば、日本食を食べること。
有名な観光地を訪れること。
ドラッグストアや百貨店で買い物をすること。
温泉に入ること。
アニメやゲームの聖地を巡ること。
日本らしい接客や清潔感を体験すること。

これらはすべて、海外の人にとっては「日本に来たからこそできる体験」です。

つまり、インバウンド顧客を見るときには、「何を買っているのか」だけでなく、「どんな体験価値を求めているのか」を考えることが大事だと感じます。

訪日外国人の主な来日目的

観光庁のインバウンド消費動向調査を見ると、訪日前に期待していたこととして、「日本食を食べること」「ショッピング」「自然・景勝地観光」「繁華街の街歩き」などが上位に挙がっています。

また、訪日外国人の旅行消費額は非常に大きく、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆円を超え、過去最高水準となっています。費目別に見ると、宿泊費、買物代、飲食費などが大きな割合を占めています。

このあたりを見ると、インバウンド顧客は日本に来て「見る」「食べる」「買う」「体験する」という複数の目的を持っていることがわかります。

ここからは、具体的なニーズを分けて整理してみます。

1. 日本ならではの観光地を見たい

まず大きいのは、日本ならではの観光地を見たいという目的です。

東京の都市観光、京都や奈良の歴史ある街並み、北海道の自然、沖縄のリゾート、富士山、温泉地、桜、紅葉、雪景色など、日本には海外の人にとって魅力的に映る観光資源が多くあります。

特に日本の場合、近代的な都市と伝統文化が近い距離にあるのが特徴だと思います。

東京でショッピングやグルメを楽しみ、京都で寺社仏閣を巡り、地方で温泉や自然を楽しむ。こうした複数の体験を一度の旅行で組み合わせられる点は、日本旅行の大きな魅力です。

マーケティング視点で見ると、観光地そのものだけでなく、「その場所で何を感じられるのか」「どんな写真が撮れるのか」「どんなストーリーがあるのか」が重要になってきます。

2. 本場の日本食を楽しみたい

次に大きいのが、日本食です。

寿司、ラーメン、和牛、天ぷら、うどん、そば、居酒屋、抹茶スイーツなど、日本食は海外でも人気があります。

ただ、海外で日本食を食べたことがある人でも、「本場の日本で食べてみたい」というニーズは強いはずです。

たとえば、ラーメン一杯でも、海外の人にとっては単なる食事ではなく、「日本のローカル文化を体験する時間」になるかもしれません。

券売機で食券を買う、カウンターに座る、店員さんの掛け声を聞く、目の前で調理される様子を見る。こうした一連の体験も含めて、日本食の魅力になっている可能性があります。

飲食店がインバウンド向けに考えるべきことは、単に英語メニューを用意することだけではありません。

「この料理の何が日本らしいのか」
「どんな食べ方をすると楽しめるのか」
「初めて来た外国人にも魅力が伝わるか」

こうした視点で情報を整理することが大事だと思います。

3. 日本の商品を買いたい

買い物も、インバウンド顧客の大きな目的です。

ドラッグストア、百貨店、家電量販店、コンビニ、アニメショップ、雑貨店、アウトレットなどは、訪日外国人にとって魅力的な買い物スポットになっています。

購入されやすいものとしては、化粧品、医薬品、お菓子、健康食品、家電、文房具、アパレル、キャラクターグッズ、伝統工芸品などがあります。

ここで面白いのは、日本の商品は「機能」だけでなく、「信頼感」や「細やかさ」も一緒に買われている可能性があることです。

たとえば、日本の化粧品には品質の安心感があります。
お菓子にはパッケージのかわいさや、お土産として配りやすい魅力があります。
文房具には、細かな使いやすさやデザイン性があります。

つまり、日本の商品は「高品質」「安心」「かわいい」「丁寧」「日本らしい」といった価値とセットで見られているのだと思います。

小売店やメーカーは、自社の商品を海外の人が見たときに、どの価値が刺さるのかを考える必要があります。

4. 日本らしい体験をしたい

最近は、単に観光地を巡るだけではなく、日本らしい体験を求める人も増えているように感じます。

たとえば、茶道体験、着物体験、酒蔵見学、料理教室、伝統工芸体験、温泉旅館、地方の祭り、農泊、アニメやゲーム関連の体験などです。

これは、インバウンド市場を見るうえでかなり重要なポイントです。

なぜなら、体験型コンテンツは、単なる物販よりも記憶に残りやすいからです。

たとえば「抹茶」を考えても、ただ商品として買うだけではなく、茶道体験をする、抹茶スイーツを食べる、カフェで写真を撮る、お土産として購入する、帰国後にECで再購入する、という流れが作れるかもしれません。

このように、体験は商品購入やリピートにもつながる可能性があります。

5. SNSで見た場所や商品を体験したい

現代の旅行では、SNSの影響もかなり大きいと思います。

Instagram、TikTok、YouTube、Google Mapなどで見た場所に行きたい。
動画で見たラーメン店に行きたい。
海外インフルエンサーが紹介していたお土産を買いたい。
アニメや映画で見た場所を実際に訪れたい。

こうした行動は、今後さらに増えていくはずです。

つまり、インバウンド顧客の目的は、来日してから決まるだけではありません。来日前の情報接触の段階で、すでに「日本でこれをしたい」「このお店に行きたい」「この商品を買いたい」と決まっているケースもあります。

マーケティング視点で見ると、来日後の接客だけでなく、来日前にどう見つけてもらうかが重要です。

英語や多言語での情報発信、Google Map対策、SNS投稿、海外向けの記事、動画コンテンツなどは、訪日前の期待形成に関わってきます。

6. 日本の安心感・清潔感・サービスを体験したい

日本旅行の魅力として、安心感、清潔感、接客の丁寧さを感じる人も多いと思います。

電車が時間通りに来る。
街が比較的きれい。
コンビニの品質が高い。
飲食店の接客が丁寧。
落とし物が戻ってくる可能性がある。

日本に住んでいると当たり前に感じることでも、海外から来た人にとっては大きな価値になることがあります。

これは、観光地や商品だけでなく、日本全体の「体験品質」が評価されているということです。

企業や店舗にとっても、商品力だけでなく、接客、導線、表示、決済、言語対応、口コミ対応など、細かい体験設計が大事になってきます。

マーケティング視点で見るべきポイント

ここまで整理すると、インバウンド顧客の目的は以下のように分けられます。

・日本ならではの観光地を見たい
・本場の日本食を楽しみたい
・日本の商品を買いたい
・日本らしい体験をしたい
・SNSで見た場所や商品を体験したい
・日本の安心感やサービス品質を味わいたい

これらに共通しているのは、「日本らしい価値」を求めているということです。

ただし、日本らしさは、必ずしも伝統文化だけではありません。

ラーメン、コンビニ、アニメ、ドラッグストア、文房具、清潔な街並み、丁寧な接客、電車の正確さなども、海外の人にとっては日本らしい魅力になり得ます。

だからこそ、企業や店舗は「自社の商品・サービスが、海外の人にとってどんな日本らしい体験になるのか」を考える必要があります。

企業や店舗が考えるべきこと

インバウンド向けに取り組む場合、まず考えたいのは以下のような問いです。

・海外の人は、自社の商品やサービスの何に魅力を感じるのか
・それは日本人が感じている魅力と同じなのか、違うのか
・来日前に情報を見つけてもらえる状態になっているか
・来店時に迷わず購入・体験できる導線があるか
・帰国後も思い出してもらえる接点があるか

特に大事なのは、来日前、来日中、帰国後の3つのタイミングで考えることです。

来日前には、SNS、検索、Google Map、海外向けサイトなどで知ってもらう。
来日中には、わかりやすいメニュー、決済対応、接客、店内導線で体験価値を高める。
帰国後には、EC、SNS、メール、口コミなどで再接点を作る。

この流れを考えると、インバウンド施策は単なる翻訳対応ではなく、顧客体験全体の設計だと感じます。

まとめ:インバウンド顧客は「日本でしか得られない体験」を探している

インバウンド顧客は、単に日本へ観光しに来ているだけではありません。

観光、食、買い物、体験、SNSで見た憧れ、安心感など、複数の目的を持って日本を訪れています。

そして、その根底には「日本でしか得られない体験をしたい」というニーズがあります。

企業や店舗がインバウンド顧客に向き合うときは、外国語対応や決済対応だけでなく、自社の商品やサービスが海外の人にとってどんな体験価値を持つのかを考えることが大事です。

このブログ「世界市場探索ラボ」では、今後も日本の商品・サービスが海外やインバウンド市場でどのように受け入れられるのかを、マーケティング視点で少しずつ整理していきたいと思います。

次回は、インバウンド顧客の中でも特に重要なテーマである「訪日外国人は日本で何を買っているのか?」について掘ってみたいと思います。

参考情報:
・観光庁「インバウンド消費動向調査」
・日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」

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